
デイサービスの送迎業務は、スタッフがひとりで対応する場面が多く、体調の急変や事故など、万が一のトラブルにも自分だけで対処しなければならないこともあります。そのため、「送迎ってストレスが大きくて苦手…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、デイサービスの送迎で感じるストレスの原因と、その対処法についてわかりやすく解説します。
筆者

野田晃司
デイサービス所長/作業療法士国家資格取得後に病院へ勤務し、介護事業を行う企業へ入社。立ち上げたデイサービスが、わずか10ヶ月で登録者数100名超えるほどの人気施設に。施設のInstagramフォロワーが40万人を突破。現在は、マーケティングライターとしてセールスコピーやSEO記事の執筆をしつつ、デイサービス運営について講演会やセミナーで登壇している。
詳しいプロフィールを見る
デイサービスの送迎がストレスに感じる理由

デイサービスのスタッフは、利用者の送迎業務にストレスを感じる方も多いようです。送迎が苦手な理由としては、利用者の命を預かっているプレッシャーや事故などのリスクによるものが影響しています。ここでは、なぜ多くの方がデイサービスの送迎業務にストレスに感じるのか解説します。
命を預かっているプレッシャー
デイサービスは、体力が落ちていたり、持病を抱えていたりする方が多く利用されています。そのため、送迎中に体調が悪化する可能性もあり、最悪の場合、急変時の対応が遅れて命を落とすこともあるでしょう。
また、どれだけ安全運転に気をつけていても、送迎中に事故をする可能性はあります。事故が原因で亡くなってしまう可能性もあり得ることを考え、大きなプレッシャーを感じるかたも多いのではないでしょうか。
デイサービスでの業務は、体力の衰えた高齢者を相手にする仕事だからこそ、命を預かるプレッシャーを強く感じ、それが大きなストレスになることもあるでしょう。
時間と仕事に追われている
デイサービスでは、提供時間やサービス内容が事前に決められており、そうしたタイムスケジュールの中で送迎をしなければいけません。できるだけスムーズに送迎を終えて、次の業務に取り掛からなければいけないため、常に時間を意識しつつ安全に送迎しなければいけません。
また、利用者ごとに体調や身体能力などがことなるため、1人ひとりに合わせた支援をする必要があります。送迎中も常に利用者のことを考えながら動かなければいけません。
送迎中は、常に時間と業務に追われた状況で業務を遂行しなければいけないため、過度なストレスがかかってしまうこともあります。

トラブル時は自分だけで判断しなければいけない
送迎時は、デイサービス内と違って、周囲に助けてくれるスタッフがほとんどいません。とくに、ひとりで送迎しなければいけないときに事故や体調不良などのトラブルが発生した場合、その場で即座に判断して動かなければいけません。
どんな状況でもひとりで対応しなければいけないプレッシャーが、スタッフのストレスを大きくする原因のひとつです。
慣れない道を走らなければいけない
デイサービスの送迎は、利用者の自宅がある場所まで迎えに行く必要があるため、普段走り慣れない道を通らなければいけません。
たとえば、狭い路地の先にある住宅は車をぶつけないように進めるように細心の注意を払いながら運転する必要があります。また、車通りの多い道路に面した住宅であれば周囲を走る車にも注意することが大切です。
施設の送迎車で走り慣れない道を通ることは、それだけで大きなストレスとなります。
運転に自信がない
送迎業務に特殊な運転技術は必要ありません。
平成18年に厚生労働省と国土交通省が連盟で出した通達「介護輸送に係る法的取扱いについて」では、デイサービスの送迎業務は自家用輸送に該当することが明文化されました。これにより、自家用車を運転する第一種運転免許があれば、誰でも堂々と送迎車を運転できるようになったのです。
しかし、免許を持っていることと運転に自信があることは別問題です。自分の運転スキルに自信を持てない方は、高齢者を乗せて街中を走ることに不安を感じ、それが大きなストレスとなってしまうこともあるでしょう。
送迎のストレスを軽減するための方法

デイサービスの送迎にストレスを感じている方は、送迎を練習したり、職場内で相談したりすることが大切です。ここでは、送迎のストレスを軽減するための具体的な方法をご紹介します。
送迎を練習する
デイサービスの送迎業務にストレスを抱えている方は、送迎の練習から始めることをおすすめします。仕事終わりや、休日の空き時間を使って、自家用車で送迎コースを実際に走ってみましょう。何度も送迎コースを走ることで、送迎時に落ち着いて運転できるようになります。
また、普段使う事業所の車に慣れておくことも大切です。たとえば、職場の駐車場で少しだけ運転させてもらったり、利用者がいない状態で街中を運転させてもらったりする方法もあります。
各施設の方針によって練習をさせてもらえない可能性もありますが、まずは一度相談してみると良いでしょう。
送迎環境について提案する
デイサービスの送迎で感じるストレスを軽減するには、運転時の環境を見直すことが重要です。
たとえば日頃から車両の清掃や点検を徹底し、ドライブレコーダーを設置して、安心して運転できる環境を整えることが重要です。また、送迎の時間に余裕がない場合は、送迎ルートやスケジュールについて職場の上司へ相談し、無理のない送迎コースへ変更すると良いでしょう。
ひとりで送迎することに不安を感じる場合は、2人体制で送迎できないか職場の上司に相談してみることもおすすめです。2人体制で送迎に行けるだけでも、落ち着いて運転に集中できるようになります。

役割を変えられないか相談する
デイサービスの送迎で大きなストレスを感じる場合は、一度上司へ相談して送迎の役割について検討してもらうのもひとつの方法です。送迎がどうしても苦手な方は、送迎業務から外れて他の仕事をさせてもらえないか相談してみましょう。
たとえば、以前事故を起こした経験がある方のなかには、精神的な影響で運転時に体調が悪化する方もいます。そうした症状がある方が無理に運転を続けると、スタッフ自身の健康状態に悪影響を及ぼすだけでなく、利用者の安全確保の面でも危険です。
どうしても運転が負担になっている方は、遠慮せずに職場の上司へ相談して、送迎業務から外してもらうのもひとつの手段です。
送迎がない職場に転職する
介護業界は、慢性的な人手不足に悩まされています。そのため、とくに小規模なデイサービスでは、介護職員も送迎に出なければいけない場面も多いでしょう。
どうしても送迎業務を回避したい方は、職場を変えるのも一つの方法です。同じ介護施設でも、グループホームや特別養護老人ホームなどの入所系施設で働く介護スタッフであれば、日常的に送迎業務をする機会はありません。
デイサービスの送迎で大きなストレスを感じる方は、送迎のない介護施設へ転職することも検討しましょう。
送迎時の注意点

デイサービスの送迎時には、安全第一の姿勢を徹底することが重要です。運転前には車両の点検を行い、ブレーキやタイヤ、燃料の残量などを確認しましょう。
また、乗降の際には利用者が転倒しないように、ドアの開閉やステップの補助に注意することも大切です。運転時は、急発進や急ブレーキは避け、穏やかな運転を心がけることで、利用者の不安や体への負担を減らせます。さらに、気温や天候に応じて車内環境を整え、体調の変化に気づけるよう、社内の会話を大切にすることも重要です。
デイサービスの送迎は、単なる移動ではなく、介護サービスの一部です。安心安全の体制を整えることはもちろんすが、丁寧な対応と配慮を心がけ、気持ちよくご利用いただけるように業務を見直していきましょう。
デイサービスの送迎で安全に運転する方法

デイサービスの送迎では、利用者を安全に送り届けることが重要です。事前にルートやマニュアルを確認し、スタッフ全員で情報を共有しながら安全に送迎する体制を整えましょう。ここでは、デイサービスの送迎で安全に運転する方法について詳しく解説します。
事前にルートを確認する
デイサービスの送迎は、利用者の自宅がある場所まで運転しなければいけないため、普段走り慣れていないルートを通る必要があります。
とくに始めて利用者の自宅へ行く場合、地図を確認しながら走らなければならず、不注意によって事故を引き起こすケースもあります。
慣れない道を通って利用者宅へ行く際は、できるだけ事前に送迎ルートを確認し、当日落ち着いて運転できるように予習しておくと良いでしょう。また事前に確認するスタッフは、道中の危険な箇所や自宅の目印などを他スタッフへ共有しておくことも大切です。
マニュアルを確認する
デイサービスの送迎を安全に行うためには、事業所ごとに作成されている送迎マニュアルを確認しておきましょう。マニュアルには、送迎ルートや乗降時の対応、緊急時の連絡体制など、基本的なルールが整理されています。マニュアルを確認しておくことで、トラブルが発生した場面で冷静に対処できるようになります。
また、事故後に関係者とトラブルになった場合、マニュアルに従って対応できていたかが争点になるケースもあります。マニュアルに従って行動することは、運転しているスタッフを守るためにも重要だと言えるでしょう。
マニュアルを確認するのは新人だけではありません。経験者も定期的に読み返し、マニュアルの見落としや自己流の運転によるトラブルを防ぎましょう。また、現場の実情に合わせて、定期的にマニュアルの見直しを提案することも大切です。
2名体制で送迎する
送迎が不安な方は、2名体制で送迎できないか職場の上司に相談してみましょう。
スタッフの数が少ないデイサービスでは、介護スタッフが1名で送迎を担当することもあります。しかし、ひとりで送迎する場合、道中に利用者の様子を把握しつつ運転に注意しなければいけないため、運転に集中できません。また、運転中に利用者が急変した際にすぐ対応できないこともあるでしょう。
2名体制の送迎では、1人が利用者の状態を把握し、もう1人が運転に集中できるため、より安全に送迎できます。ひとりでの送迎が不安な方は、2名体制で送迎できないか相談してみましょう。
デイサービス送迎のよくある質問

デイサービスの送迎は、体調の不安定な高齢者を乗せる機会も多いため、想定外のトラブルが発生することもあります。そのため、送迎中に体調が急変したときの対処法や事故が発生したときの対処法などを事前に知っておくと安心です。ここでは、デイサービスの送迎に関する疑問について詳しく解説します。
送迎がないデイサービスもある?
基本的に、送迎がないデイサービスはありません。
介護保険制度では、デイサービスの基本報酬に送迎費用も含まれています。利用者の都合で送迎を断ることも可能ですが、その場合は送迎減算の対象となり、施設の報酬が下がります。送迎をしないと減算される仕組みになっていることからわかる通り、デイサービスは原則として送迎をする想定のもと提供される通所サービスです。
一部例外はあるものの、ほぼすべてのデイサービスで送迎をしていると考えて良いでしょう。
送迎中に急変したらどう対処する?
送迎中に利用者が急変した場合、まずは安全な場所へ車を止め利用者の救護を最優先に行いましょう。利用者の安全が確保できたら、必要に応じて救急車の要請や、自施設への連絡を行いましょう。
ただし、すべてのケースで上記の対処法が正しいとは限りません。まずは各施設で設定している緊急時の対応マニュアルに従うことが大切です。普段からマニュアルに目を通しておき、急変時にどう対処すべきか考えておきましょう。
デイサービスの送迎は無理をしないことが大切
デイサービスの送迎は、利用者の命を預かる責任の大きさや、複数の情報を同時に整理しながら運転しなければいけない大変さから、スタッフに大きなストレスを与える業務のひとつです。
送迎のストレスを軽減するためには、送迎コースを予習したり、マニュアルを確認したりなどの準備が必要です。また、どうしても送迎が大きな負担となってしまう場合は、送迎業務について上司に相談するのも良いでしょう。
送迎業務は、安全を確保することが第一です。しかし、無理に送迎を続けることで、取り返しのつかない事故を起こす可能性もあります。送迎業務が苦手な方は、遠慮なく周囲に助けを求めましょう。