
デイサービスの送迎時、「家族が不在でも問題ないか?」と不安を抱える方は少なくありません。
実は、介護保険制度上では送迎は玄関先までとされており、家族の立ち会いは必須ではありません。ただし、利用者の状態によっては、別の介護サービスとの連携や、事前の施設との調整が必要になるケースもあります。
本記事では、家族不在でも安心して送迎を受けられるための基本ルールと、現場でよくあるトラブルへの対処法を、実務目線でわかりやすく解説します。
筆者

野田晃司
作業療法士/ライター国家資格取得後に病院へ勤務し、介護事業を行う企業へ入社。立ち上げたデイサービスが、わずか10ヶ月で登録者数100名超え、稼働率80%以上をキープし続ける。事業所で立ち上げたInstagramのフォロワーが40万人を突破し、テレビや新聞など各メディアから取材を受けるほどの施設に成長。現在は、ライターとしてセールスコピーやSEO記事の執筆をしつつ、デイサービス運営について講演会やセミナーで登壇している。
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デイサービスの送迎は家族不在でもOK

デイサービスの送迎は、家族が不在でも対応可能です。介護保険制度における送迎サービスは、原則として利用者の自宅玄関先までとなっているため、家族が立ち会う必要はありません。
ただし、認知症や身体的な理由で玄関から居室までの移動が難しい場合は、居室まで付き添ってくれる事業所もあります。どうしても、家族が不在の時間帯に送迎をしなければならず、居室まで送って欲しい場合は、利用する施設と相談すると良いでしょう。
デイサービスでの対応が難しい場合は、利用者を送り出すために別の介護サービスを利用する必要があります。居室までの送迎が可能か有無事前に確認し、必要に応じてケアマネージャーへ対処法を相談しておくと安心です。
参考:令和3年度介護報酬改定における改定事項について 第199回社保審-介護給付費分科会 厚生労働省
家族不在でもスムーズに送迎をする方法

デイサービスの送迎時間に家族が同席できない場合、まずはデイサービスに相談し、必要に応じて他のサービスを利用する方法があります。
ここでは、施設に相談する際のポイントや、他の介護サービスを利用する場合の方法などについて詳しく解説します。
施設に相談する
デイサービスを利用する際には、事前に送迎の手順について施設のスタッフに相談しておくことが大切です。
たとえば、送迎の時間を確認して玄関先まで一人で出られるのか、デイに必要な物品の準備ができるのか、などの情報を共有することでよりスムーズにデイサービスを利用できます。
また、施設によって、対応できる業務の範囲は異なります。不在時の対応ルールをあらかじめ話し合っておくことで、送迎時のトラブルを防げるでしょう。
他の介護サービスを利用する
利用者が自力で玄関先まで出てこれず、デイサービスの協力を得られない場合には、他の介護サービスを組み合わせる方法もあります。
たとえば、訪問介護の「身体介護」や「生活援助」を使って、着替えや整容、玄関までの誘導などを行ってもらうことも可能です。また、「送り出しヘルパー」など、地域で提供されている独自の支援サービスを活用するケースもあります。
デイサービスの送迎支援に訪問介護などのサービスを利用する場合、ケアプランへ組み込んでもらう必要があります。一度ケアマネージャーへ相談し、利用を検討しましょう。
ただし、他の介護サービスを利用すると、利用料が発生します。毎月の費用が増加する点には注意しましょう。
デイサービス送迎時で利用できる「居宅内介助サービス」とは

前述したとおり、介護保険上におけるデイサービスの送迎は、原則玄関先までです。そのため、通常は「デイサービスの利用時間は、デイサービスの玄関を入ってから、帰りに玄関を出るまでの時間」で換算して保険請求を行います。
しかし、デイサービスの送迎時に利用者が自宅内から玄関まで一人で出られない場合に、職員が屋内に入り支援する時間もサービス提供時間に含めることが可能です。(原則30分が限度)
このように、何らかの事情により、デイサービス送迎時の支援が必要な方に対して居室内で支援を行うサービスを居宅内介助サービスと言います。
たとえば、ベッドから車いすへの移乗や衣服の整えなどが支援の対象となっています。ただし、居宅内介助サービスを提供していない施設もあるため、ケアマネージャーを通じて事前に相談しておくと安心です。
デイサービスの送迎に関するルール

デイサービスの送迎をする際には、送迎に必要な資格を把握しておくことと、適切な送迎記録を付けることが大切です。ここでは、デイサービスの送迎に関する基本的なルールについて詳しく解説します。
送迎業務に必要な資格
デイサービスの送迎業務には、特別な資格は不要です。基本的に「普通自動車運転免許」を保有していれば、送迎業務を行えます。また、介護職員でなくても運転は可能なため、送迎専門スタッフに依頼している施設もあります。
ただし、送迎中に体調不良やケガなどのトラブルが発生することも少なくありません。送迎専門スタッフが運転する場合でも、利用者の安全を守るために介護福祉士などの資格を持つスタッフが添乗する必要性は高いでしょう。
送迎記録の必要性と記載すべき情報
デイサービスの送迎では、送迎記録の作成が義務付けられています。送迎記録は、介護サービスの提供状況を証明するだけでなく、トラブルや事故発生時の対応にも役立ちます。送迎記録に記載すべき事項は、以下のとおりです。
- 利用者ごとの乗車
- 降車時間
- 送迎ルート
- 運転手および添乗職員の氏名
- 体調や様子の変化
- 特記事項(遅延、家族からの申し送りなど)
上記の内容を記録することで、職員間での情報共有がスムーズになり、サービスの質の向上にもつながります。記録は事業所の管理責任の一環として、正確かつ継続的に行うことが大切です。
デイサービス送迎でよくあるトラブルと対処法

デイサービスの送迎業務では、さまざまなトラブルに遭遇することがあります。事前に起こりうるトラブルを予測し、対処法を知っておくことで、未然にトラブルを防げることもあるでしょう。ここでは、デイサービスの送迎でよくあるトラブルと対処法について詳しく解説します。
利用者が準備できていない
デイサービスの送迎時によくあるトラブルの一つが、利用者が時間になっても準備できていないケースです。体調不良や認知症による混乱、家族のサポート不足などが原因で、玄関に出てこられないことがあります。
こうしたトラブルを避けるためには、事前に利用者の状態や生活リズムを把握し、送迎時間に余裕を持たせることが大切です。また、必要に応じて訪問介護など他サービスと連携し、送り出し支援を導入することでトラブルを未然に防げます。
送迎時間に遅れてしまう
デイサービスの送迎では、交通渋滞や前の利用者対応の遅れにより、予定時刻に間に合わないことがあります。遅延が発生すると、家族や利用者に不安を与えるだけでなく、他のサービス内容にも影響が出る可能性があります。
予定していた送迎時間に遅れる場合は、速やかに連絡する体制を整えておき、本人や家族へ連絡などの対処をすることが大切です。
また、送迎時間の遅れが頻発する場合、送迎ルートの見直しや複数便を運用するなどの方法も検討しましょう。施設と利用者との信頼関係を保つためにも丁寧な対応が求められます。
送迎中に転倒やケガをする
デイサービスの送迎中に起こるトラブルとして、乗降時や車内での転倒・ケガが挙げられます。特に足元が不安定な利用者や認知症の方は転倒リスクが高く、場合によっては重大な問題に発展することもあります。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、スタッフへの指導や送迎環境の工夫などが重要です。また、車両の安全設備(ステップ・手すり・シートベルトなど)を整備し、送迎スタッフを増やすことで安全性を高められます。
日々の記録と観察を通じて、リスクの早期把握に努めましょう。
まとめ|家族不在の送迎で事故が起きないように注意しましょう
デイサービスの送迎時に家族が不在の場合、不安を抱える利用者も多いでしょう。居宅内介助サービスなど、家族が不在でも対応できる仕組みが整いつつありますが、施設の状況によって対応は異なります。
デイサービス経営者は、こうした送迎時の不安に対して対応できる体制を整えておくと、利用者や家族に安心して利用していただけるでしょう。
最も避けなければいけないことは、送迎時の事故やトラブルです。家族と施設でじっくりと話し合い、双方にとって最適な選択肢を選びましょう。
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