デイサービス利用料で医療費控除を受ける方法|条件と注意点を解説

デイサービスの利用料金が医療費控除の対象になることをご存じでしょうか?基本的には、医療費控除の対象外となるデイサービスの費用ですが、とある条件を満たすことで所得控除を受けられます。

この記事では、デイサービスの利用料金で医療費控除を受ける方法などをご紹介します。デイサービス管理者歴8年とFP2級の資格を持つ「介護とお金のプロ」が、実際の節税シミュレーションを交えつつ、デイサービス利用料の医療費控除についてわかりやすく解説します。

筆者


野田晃司

デイサービス所長/作業療法士

国家資格取得後に病院へ勤務し、介護事業を行う企業へ入社。立ち上げたデイサービスが、わずか10ヶ月で登録者数100名超えるほどの人気施設に。施設のInstagramフォロワーが40万人を突破。現在は、マーケティングライターとしてセールスコピーやSEO記事の執筆をしつつ、デイサービス運営について講演会やセミナーで登壇している。

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医療費控除とは

医療費控除とは、1年間の所得を申告する際に、所得から差し引ける控除の一つです。医療費控除を受けることで、翌年の所得税や住民税が安くなります。ここでは、医療費控除とはそもそもどんな制度なのか、利用するメリットなどについて詳しく解説します。

医療費控除の仕組み

医療費控除とは、1年間に支払った医療費の合計が一定額を超えた場合に、その超過分を所得から差し引くことで、税負担を軽減する制度のことです。控除の条件と控除される金額については以下の表をご確認ください。

控除対象となる医療費の条件
(1)納税者が自分や生計を一にする配偶者、その他の親族のために支払った医療費であること
(2)その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること(未払いの医療費は、現実に支払った年の対象となる)
控除の対象となる金額
以下の計算式で算出した金額
(実際に支払った医療費の合計額 -(1)保険金などで補てんされる金額)- 10万円
*最高200万円まで

参照:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁

医療費控除を受けるメリット

医療費控除は、医療費による経済負担を軽減し、国民が安心して必要な医療を受けられるようにすることを目的とした控除制度です。医療費控除を受けることで、翌年の所得税や住民性が安くなり、結果的に手元に残るお金が増えます。

さらに、本人だけでなく生計を一にする家族の医療費も対象にすることで、家計全体への負担を軽減するように設計されています。控除の対象になる方は積極的に制度を活用し、税負担を最小限にすると良いでしょう。

医療費控除を受けるときの注意点

医療費控除を受けるためには、確定申告をする必要があります。特にこれまで会社員で、一度も確定申告をしたことがない方の場合、どのように申告すればいいのか迷うこともあるでしょう。

自分で申告できない方は、税理士に相談するか、税務署の窓口で相談しながら手続きを進めるのがおすすめです。また、確定申告時には、領収書や明細書が必要になるため、1年分の領収書などを保管しておきましょう。

デイサービスは医療費控除の対象となるのか?

医療費控除の対象となる医療費は、主に医師や歯科医師による診療や治療の対価です。さらに各病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない金額である必要があります。

一方デイサービスは、医療行為を行う施設ではなく、日常生活の支援を目的としている施設です。そのため、基本的には医療費控除の対象外となります。ただし、訪問看護や通所リハビリなどの医療系サービスと併用した場合は、デイサービスの費用の一部が医療費控除の対象になることもあります。

医療費控除の対象となる医療費について詳しく知りたい方は、国税庁のページもご覧ください。

引用:No.1122 医療費控除の対象となる医療費|国税庁

デイサービスで医療費控除を受けるための条件

デイサービスの費用で医療費控除を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。とくに重要なポイントは、併用しているサービスと自己負担している金額、確定申告の手続きです。ここでは、デイサービスの費用で医療費控除を受けるための条件について詳しく解説します。

医療系サービスと併用している

デイサービスは福祉系サービスのため、単独で利用しても医療費控除の対象外となります。しかし、訪問看護や通所リハビリ(デイケア)などの医療系サービスと併用している場合は、デイサービスの自己負担分も控除対象になります。併用することでデイサービスが医療費控除の対象になるサービスは、以下のとおりです。

併用することで医療費控除の対象となる居宅サービス等
・訪問看護
・介護予防訪問看護
・訪問リハビリテーション
・介護予防訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導【医師等による管理・指導】
・介護予防居宅療養管理指導
・通所リハビリテーション【医療機関でのデイサービス】
・介護予防通所リハビリテーション
・短期入所療養介護【ショートステイ】
・介護予防短期入所療養介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限ります。)
・看護・小規模多機能型居宅介護(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)
引用:No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価|国税庁

自己負担額が一定の割合を超える

医療費控除を受けるためには、医療費控除の対象となるサービスの自己負担額が年間で10万円を超えている必要があります。

この場合の自己負担額とは、病院を利用した医療費などの医療サービスを利用した金額も合算した金額です。ただし、所得総額が200万円未満の方は10万円ではなく、所得の5%を超えた場合に対象となります。

たとえば医療系の居宅サービスとデイサービスを併用している方の自己負担額が年間で10万円未満だったとしても、病院へ支払った医療費(自己負担分)と合算した金額が10万円を超える場合は、医療費控除の対象となります。

確定申告をする

医療費控除を受けるためには、必ず確定申告をする必要があります。

会社員の方は、基本的に雇用主である会社が所得の申告をするため、確定申告をしなくても一部の所得控除などを受けられます。しかし、医療費控除を受けるためには、会社員も確定申告をしなければいけません。

デイサービス利用者が医療費控除を受ける手順

デイサービスの利用料を支払っている方が、医療費控除を受けるためには、以下の3ステップが必要です。

  1. 領収書を確認する
  2. 自己負担額が一定割合を超えているか確認する
  3. 必要書類を揃えて申告する

ここでは、医療費控除を受ける各ステップで重要なポイントをご紹介します。

1、請求書を確認する

デイサービス利用料が医療費控除の対象になる場合、施設側は控除可能な自己負担分を領収書に記載する義務があります

医療費控除を利用できる方は、デイサービスから受け取る領収書を確認し、医療費控除の対象額が記載されているか確認しましょう。

2、自己負担額が一定割合を超えているか確認する

デイサービスの費用が医療費控除の対象となるのは、医療系サービスと併用しており、かつ自己負担額が一定割合を超えている場合に限られます。

1年間に支払った医療費やデイサービスの領収書に記載された医療費控除の対象額が、合算して10万円(もしくは課税所得200万円未満の方は総所得の5%)以上になっているか確認しましょう。

ただし、生命保険の入院給付金や高額療養費制度などで戻ってきた金額があった場合は、その額を差し引いて実質的に負担した金額を求めなければいけません。保険などでカバーされた部分にも注意しつつ年間の自己負担額を確認しましょう。

3、必要書類を揃えて申告する

医療費控除を受けるには、確定申告時に必要な書類をきちんと揃えておくことが重要です。主に基本となる書類は、医療費控除の明細書と、医療費の支出が確認できる領収書です。

デイサービスの費用を申告する場合は、医療費控除対象額が明記された領収書を保管しておきましょう。また、ケアプランやサービス提供証明書が求められるケースもあります。

確定申告の方法は、税務署や確定申告会場へ直接書面を提出する方法とe-Taxで電子申告をする方法があります。申告期間は、毎年2月中旬〜3月中旬です。確定申告書を提出する際には、必ずしも領収書の添付を求められませんが、5年間の保管義務があるため、紛失に注意しましょう。

医療費控除の申告に必要な書類と書き方

確定申告で医療費控除を受ける際には、医療費控除の明細書や確定申告書などの書類を提出する必要があります。しかし、普段確定申告をしたことがない方は、書類の書き方などに戸惑うことも多いでしょう。ここでは、医療費控除を受けるために必要な書類の書き方について詳しく解説します。

医療費控除の明細書

医療費控除の明細書は、医療費控除の対象となる費用を申告するための書類です。記載する箇所はわかりやすく、各費用の足し算をするだけで簡単に作成できます。実際の書類と記載する箇所については、以下をご確認ください。

  1. 医療費通知を確認し、記載された金額を「1医療費通知に記載された事項」に記載
  2. 医療費通知に記載されていないものを「2医療費(上記1以外)の明細」へ記入
  3. 医療費の合計金額(A・Bの欄)を記載
  4. AとBに記載された金額を「3控除額の計算」へ転記
  5. 上から順番に計算し、Gの欄まで埋める

医療費通知とは、国民健康保険や健康保険組合などの保険者が毎年2月ごろに各家庭へ発行する書類です。1年で使った医療費が記載されている書類で、医療費控除の対象になるか確認するためにも重要なので紛失しないように注意しましょう。

デイサービスの利用費は、医療費通知には記載されていません。領収書を確認して、医療費控除対象となる金額を「2医療費(上記1以外)の明細」へ記入しましょう。医療費控除の明細書は、以下のページからダウンロードして使用できます。

医療費控除の明細書ダウンロード|国税庁

確定申告書

確定申告には、確定申告書を提出しなければいけません。確定申告書への記載方法は、国税庁が記載例を公開しています。記載の手順については、以下をご確認ください。なお、普段確定申告に慣れていない方向けの解説のため、以下の手順は給与所得者が確定申告する場合の手順です。

  1. 第一表に氏名や住所、マイナンバーなどを記載
  2. 源泉徴収票に記載されている給与所得額を(オ)の欄に記載
  3. 前述した医療費控除の明細書で計算した金額を医療費控除(27)の欄に記載
  4. 第二表に氏名や住所を記載
  5. 所得の内訳に源泉徴収票に記載された所得額を記載
  6. その他で受ける控除を記載
  7. 扶養家族の情報を記入

確定申告書で記載すべき箇所は、それぞれ受けられる控除や所得の種類などによって異なります。初めて確定申告をされる方は、税務署や確定申告会場で職員に聞きながら記載することをおすすめします。

確定申告書ダウンロード|国税庁

また、マイナポータル連携を済ませている方は、医療費控除に使用できる医療費通知情報をマイナポータル経由で取得し、確定申告書の該当箇所に自動で入力することも可能です。e-Taxを使用すれば、スマホだけで確定申告を済ませることもできます。詳しくは、以下のページをご確認ください。

確定申告書作成コーナー「入力方法の選択(医療費控除)」|国税庁

領収書

確定申告の手続きでは、基本的に医療費控除の対象となる費用の領収書を添付する必要がありません。しかし、手続きの中で何かしらの不備があった際に提出を求められることがあるため、すぐに提出できるように保管しておきましょう。

また、確定申告が終了したあとも5年間は領収書の自宅保管が義務付けられているため、紛失しないように保管しておきましょう。

医療費控除の節税シミュレーション

医療費控除を受けることで税金を抑えられます。しかし、実際にどれくらい税金が安くなるのかわからない方も多いのではないでしょうか。ここでは、医療費控除を受けた場合にどの程度税金が安くなるのか、モデルケースでシミュレーションを行います。

たとえば年収450万円の方が、年間で支払った医療費が20万円だったとします。このうち、5万円は生命保険の保険料で補てんされました。この方が医療費控除を受けた場合に税金から控除される金額は、以下のとおりです。

【所得税の節税効果】
20万円(医療費の自己負担額)- 5万円(生命保険などで補填された金額)-10万円 × 20%(所得税率)=1万円

【住民税の節税効果】
20万円(医療費の自己負担額)- 5万円(生命保険などで補填された金額)-10万円 × 約10%(住民税率)=5,000円

なお、上記は医療費控除以外の控除を入れずに計算した場合です。他の控除の状況によって課税所得が変わるため、実際の節税効果には若干変動があります。また、所得税率は、課税所得が450万円だった場合を想定して計算しています。

医療費控除のよくある質問

デイサービスの費用で医療費控除を受ける際には、医療費控除の対象になるか確認する方法や、オムツ代などの自己負担額に対する扱いなどが気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、デイサービス利用費で医療費控除を受ける際によくある質問について解説します。

医療費控除が使えるか確認する方法は?

医療費控除の対象額を確認したい際には、施設から受け取った領収書を確認すると良いでしょう。

また、より詳しく知りたい方はケアマネジャーに聞くのもおすすめです。担当ケアマネジャーは、デイサービス以外に利用しているサービスが医療系サービスに該当するか把握しています。医療系サービスと併用しているか確認してみるのも良いでしょう。

おむつ代も医療費控除の対象になる?

基本的におむつ代が医療費控除の対象となりませんが、一部の条件を満たしたおむつ代は医療費控除の対象となります。おむつ代が医療費控除の対象として認められるためには、確定申告の際に寝たきり状態にあり、治療上おむつの使用が必要だと判断した医師がおむつ使用証明書を発行される必要があります。

確定申告の際には、おむつ代の領収書と医師が発行する「おむつ使用証明書」を提出する必要があります。また、おむつ代で医療費控除を受けるのが2年目以降になれば、おむつ使用証明書なしで手続きをすることも可能です。

より詳しく知りたい方は、以下のページをご確認ください。

参照:おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」に代えた簡易な証明手続等)について(法令解釈通達)|国税庁

デイサービスの利用費で医療費控除を受けて税負担を抑えましょう

一定条件を満たす方は、デイサービスの利用料が医療費控除の対象となります。医療費控除を受けることで税金を安く抑えることができるため、積極的に活用しましょう。

デイサービスの利用料で医療費控除を受けるためには、デイサービスのほかに医療系サービスを併用している必要があります。また、年間の自己負担額が10万円以上(所得が200万円未満の方は所得の5%以上)であることも条件のひとつです。

デイサービスの費用が医療費控除の対象になる場合、領収書へ記載することが義務化されています。ご自身の利用費が医療費控除の対象になるか気になる方は、デイサービスから発行される領収書を確認してみましょう。

デイサービスを利用している方にとって、毎月の利用費は大きな負担となります。医療費控除の対象となる方は、できるだけ制度を活用して税負担を抑えましょう。

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