デイサービスで盛り上がる話をするには?会話のコツとおすすめの話題

デイサービスでは、利用者とコミュニケーションを取る機会が多いため、人前で話すのが苦手で悩んでしまう方もいます。

デイサービスでの会話を盛り上げるには、流暢に話すトーク力や豊富な話のネタを用意する必要はありません。大切なことは、利用者の興味のあるテーマで、相手の話を引き出すことです。

この記事では、デイサービスで盛り上がる話をするためのコツやおすすめの話題について解説します。

筆者


野田晃司

作業療法士/マーケティングライター

国家資格取得後に病院へ勤務し、介護事業を行う企業へ入社。立ち上げたデイサービスが、わずか10ヶ月で登録者数100名超えるほどの人気施設に。施設のInstagramフォロワーが40万人を突破。現在は、マーケティングライターとしてセールスコピーやSEO記事の執筆をしつつ、デイサービス運営について講演会やセミナーで登壇している。

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デイサービスで盛り上がる話をするには?

デイサービスでは、朝の会での進行や空き時間でのコミュニケーションなど、さまざまな場面で利用者と会話する機会があります。利用者との会話を通じて、利用者と職員の関係性も構築され、デイサービスへの満足度も向上します。

しかし、利用者との会話を盛り上げるのが苦手な職員も多く、利用者との話題作りに悩む方も多いのではないでしょうか?実は、盛り上がる話をしようと意識すると、かえって盛り上がらなくなる場合もあります。実は、流暢な会話をすることよりも「いかに相手の興味が湧く話題を用意して、利用者自身に語ってもらえるか」が重要です。

デイサービスで盛り上がる話題8選

デイサービスで盛り上がる話をしたい場合は、巧みな話術や凝ったストーリーを用意する必要はありません。利用者が興味を持つ話題を提供して、利用者自身に語ってもらうことが大切です。ここでは、利用者との話題作りに最適なテーマをご紹介します。

今日はなんの日

「今日は何の日?」は、季節感や時事性があり、利用が興味を持ちやすいテーマのひとつです。たとえば「6月10日は時の記念日です」など、豆知識を加えると会話のきっかけになることもあります。また、記念日から連想される体験談(腕時計の話・昔の時間の過ごし方など)にも展開しやすいのも特徴です。

今日が何の日か知りたい場合は、インターネットを活用することで、たくさんの情報が出てきます。毎日何かしらの記念日があるため、話題が尽きることはありません。レクリエーションや会話の導入として朝の会でも活用しやすいテーマです。

昔話や子ども時代の話

子どものころの遊びや学校生活、家庭での習慣などは、共感を呼びやすく会話が弾む鉄板のテーマです。自分の話をしたがっている方は多いため、懐かしい話題を出すことで、積極的に話に乗ってきてくれます。たとえば「子どものころどんな遊びをしていた?」「どんな食べ物が人気だった?」などの話題は利用者も参加しやすいテーマで、現在の生活と比較するとより関心を持ってもらいやすいでしょう。

話を引き出す際には、職員が先に子ども時代の話をすると利用者も自分の話をしやすくなります。まずは、自分の過去の思い出を語り、話題を振ってみるのもおすすめです。過去を語ることは、認知症の進行予防にも効果的です。

最近話題のニュース

テレビや新聞で取り上げられている身近なニュースは、会話のきっかけに最適です。ただし、事件・事故などネガティブな話題を避けるようにしましょう。そうした話題は、利用者の辛い過去を思い出すきっかけになることも多く、場が盛り上がりにくくなります。

話題のニュースをテーマにする際には、地域の話題、スポーツの話題など、明るく前向きな内容を選ぶのがおすすめです。ニュースに関心のない利用者には、簡単な背景説明を添えると参加しやすくなります。

趣味や好きなもの

趣味や好きなものの話は、多くの利用者が乗ってきやすい話題です。相手の趣味の話などを掘り下げていくと、話題に困らなくなるでしょう。ただし、高齢になるとともに趣味ができなくなっていく方もいます。そうした方に趣味の話題を振ると「最近はできなくなってしまった…」とネガティブな方向へ話が進んでしまうおそれもあります。

最近夢中になっている趣味について聞くことも良いですが、「若いとき、夢中になっていたことはありますか?」と聞くのもおすすめです。昔の趣味や好きなものは、相手の中で輝かしい思い出として残っていることも多いため、そうした思い出を語ってもらうことでポジティブな気持ちになってもらえます。

ただし、自分の趣味や好きなことを話すことに抵抗を感じる方もいます。できれば、先に職員が自分の趣味を話すことで、利用者との距離が縮まりやすくなり、利用者も自分の話をしやすい雰囲気が生まれます。無理に聞き出そうとせず、自然な会話の中で好みを拾っていくのがポイントです。

クイズやなぞなぞ

簡単ななぞなぞやクイズは、脳の活性化につながるだけでなく、コミュニケーションのきっかけ作りにも最適です。多くの方は、問いかけると答えたくなる傾向があります。発言することはなくても、自然と頭の中で考えてしまうのがクイズやなぞなぞの特徴です。すぐに反応がなくても、後から「あの問題の答えはなんだったの?」と話題になることもあります。

とくに時代を感じさせる内容(昭和の流行語・芸能人など)についてクイズがおすすめです。ただし、間違った答えをしたときや、答えがわからなかったときに失敗体験とならないように注意しましょう。一度間違っても正解するまで答えてもらう、1人で回答するのを避ける、などの工夫をすると良いでしょう。

脳トレ体操

脳トレ体操は、身体と頭を同時に刺激できるだけでなく、コミュニケーションも生まれやすいレクリエーションです。あえて多くの方が失敗する難しい体操を取り入れ「できないことを楽しむ雰囲気」を作ると盛り上がりやすいでしょう。取り入れやすい脳トレ体操の事例は以下のとおりです。

  • 右手で丸、左手で三角:右手で空中に丸を描きながら、同時に左手で三角を描く動作で、左右別々の動きをすることで脳の活性化を促します。
  • グーパー体操:両手をグーとパーに交互に開閉し、手の動きを左右で変えることで認知機能や集中力の向上を目指す体操です。

季節の行事

季節の話題は、万人が興味を持てる話題のため、自然と会話が弾みます。たとえば、季節ごとの話題として、以下のようなものがあります。

  • 春:お花見、入学式、卒業式
  • 夏:盆踊り、夏祭り、花火
  • 秋:運動会、紅葉狩り、お月見
  • 冬:お正月、節分、クリスマス

季節ごとに一つのテーマを取り上げ、昔の過ごし方や家族とのエピソードを聞いていくのがおすすめです。会話の中で懐かしい記憶が呼び起こされ、自然と話が盛り上がるでしょう。さらに行事の写真や飾りを活用することで、話のきっかけが生まれやすくなります。

好きな食べ物

好きな食べ物の話題は、誰でも親しみやすく、気軽に参加できる会話のきっかけになります。昔よく食べた郷土料理や、家庭で作っていた定番メニューなどをテーマに取り上げるのがおすすめです。

たとえば、「昔のおやつは何だった?」「給食で好きだったメニューは?」といった質問を投げかけると、利用者自ら発言してくれるでしょう。季節ごとの食べ物や、地域ならではの食文化をテーマにするのもおすすめです。食べ物の話から自然と笑顔が生まれ、利用者同士の交流も深まりやすくなります。

話を盛り上げる3つのポイント

話を盛り上げるためには、面白い話をしなければいけないと考えている人もいます。しかし、盛り上がる話をするのに、流暢なトーク力は不要です。話を盛り上げるには、いかに利用者の話を引き出せるかがポイントになります。ここでは、デイサービスで話を盛り上げる際のコツについて解説します。

利用者の話を引き出す

デイサービスで盛り上がる話をしようと考えるあまり、「面白いネタ」を探して場を盛り上げようとする方がいます。しかし、実は話のネタではなく、いかに利用者を巻き込めるかが重要です。

まずは、利用者が話しやすいように、和やかな雰囲気を作りましょう。その後、話のテーマを決め、質問していくのが基本の流れです。さらに、「はい」か「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンではなく、オープンクエスチョン(自由に答えられる質問)を使うと、会話が広がりやすくなります。

たとえば、「おにぎりは好きですか?」というクローズドクエスチョンではなく、「どんな食べ物が好きですか?」といったオープンクエスチョンのほうが話を広げやすいでしょう。

相手を否定しない

デイサービスでの会話では、相手の意見や思い出を否定しないことが重要です。仮に事実と異なっていたとしても、「そうだったんですね」と共感する姿勢を持ちましょう。相手の間違いを正そうとするのではなく、話の流れを受け入れることで相手に安心感が生まれます。
できるだけ「でも」や「違いますよ」といった言葉は避けるように意識しましょう。高齢者が安心して話せる雰囲気づくりが、楽しい会話につながります。

常に笑顔で話す

笑顔は、相手に安心感を与え、利用者との距離を縮める効果があります。常に笑顔で話しかけることで、利用者も自然と笑顔になり会話が弾みやすくなります。緊張している利用者と会話する際にも、できるだけ笑顔で語りかけ、リラックスできる雰囲気を作りましょう。

実は、言葉以上に表情や態度は相手の印象に残ります。認知機能が低下して言葉によるコミュニケーションが取れない方でも、表情でお互いの気持ちを伝えることもできます。マスク越しでも、目元や声のトーンで笑顔を伝えられるように、常に笑顔を意識しましょう。

デイサービスで盛り上がる話をするメリット

デイサービスでの会話は、利用者の心身にさまざまな影響を与えます。会話を楽しめる空間であれば、利用者に「また次回も楽しく過ごせる」と思っていただけるでしょう。一方で、施設内で会話をするのがストレスに感じる場合は、利用を続けることを拒否してしまう可能性もあります。

会話を通じて笑顔が増える環境では、ストレスが軽減され、気持ちが前向きになる効果も期待できます。また、人との会話は認知機能の維持にもつながるでしょう。会話を通じた交流によって孤立感を和らげ、施設内での人間関係を円滑にすることも大切です。

高齢者とコミュニケーションを取るときの注意点

高齢者とコミュニケーションを取る際には、同世代とコミュニケーションを取るときと少し異なる距離感で会話をすることが大切です。とくに、デイサービスの利用者と話をする際には、会話のスピードやトーンを相手に合わせましょう。安心して発言できるように、心理的な安全性を確保することも大切です。

センシティブな話題は避ける

高齢者との会話では、センシティブな話題を避けることが大切です。たとえば、病気や死別、家庭内のトラブル、金銭問題などは、相手の心を傷つけてしまうおそれがあります。さらに、本人が気にしていなくても、周囲の利用者に影響を与えるケースもあるため注意が必要です。

とくにデイサービスのような集団の場では、共通して安心できる話題を選ぶ配慮が求められます。明るく前向きなテーマを中心に話を広げることが、会話を通じた円滑なコミュニケーションにつながります。

会話のスピードやトーンを相手に合わせる

高齢者と会話をするときは、相手の聞こえ方や理解のペースに合わせて、話すスピードやトーンを調整することが大切です。早口すぎると相手に聞き取ってもらえなくなり、逆に遅すぎると違和感を覚える方もいます。

また、高すぎる声は耳に響いて不快に感じられることもあるため、優しく落ち着いたトーンを意識しましょう。相手の表情や反応を見ながら、一呼吸おいて話しかけるだけでも配慮が感じられて、相手を安心させられます。聞こえやすさへの配慮が、信頼関係の第一歩と考えておきましょう。

心理的な安全性を確保する

高齢者との会話では、心理的安全性の確保が非常に重要です。相手が安心して話せるよう、否定的な言葉や批判を避け、相づちや共感を大切にしましょう。話の内容だけでなく、表情や態度にも配慮し、「ここでは何を話しても大丈夫」と思ってもらえる雰囲気づくりが信頼関係につながります。

また、話を盛り上げようとするあまり、話の主導権を握ろうとする方もいます。しかし、そうした態度は、相手に威圧感を与えてしまうため、話の主導権を無理に握らず、相手のペースを尊重することも大切です。そうした態度を取ることで、心を開いてもらえるようになります。

デイサービス利用者との会話でよくある悩み

デイサービスの利用者と会話で悩みを抱える介護職員や管理者は多いようです。私の過去の経験から、何回も相談を受けることがありました。ここでは、デイサービスの会話でのよくある悩みについて解説します。

会話が盛り上がらないときはどうする?

利用者との会話が続かないときは、無理に話を広げようとせずに、相手のペースに合わせることを意識するとよいでしょう。コミュニケーションが苦手な利用者もいるため、無理に距離を詰めようとすると、相手のストレスになることもあります。相手の様子を観察し「どんなことに興味を持つのか」「何が好きなのか」といった情報を集めて、タイミングを見ながらコミュニケーションを取ると良いでしょう。

認知症の方と話すときにはどう話す?

認知症の方との会話では、相手のペースに合わせて、ゆっくり・はっきり話すことが重要です。話が噛み合わなくても否定せず、相手の話に同調しながら、受け止める姿勢を意識しましょう。

また、昔の思い出や好きな食べ物など、本人が覚えている話題を選ぶと安心感が生まれやすくなります。会話が途切れても焦らず、笑顔やうなずきなどの非言語コミュニケーションを活用しましょう。

会話が苦手な場合はどうすればいい?

会話が苦手な方は、無理に話そうとせず「聞き役」にまわることを意識しましょう。会話がうまい人は、流暢に言葉が出てくる人ではなく、相手の話を引き出せる人です。利用者の話に耳を傾け、「それでどうなったのですか?」「昔はどんなことが楽しかったですか?」など、話を広げる質問を投げかけると良いでしょう。

また、事前に相手が話しやすいテーマを用意しておくのもおすすめです。相手の好きなことや興味のあることを調べておき、その話題を振るだけでも会話が盛り上がりやすくなります。言葉がうまく出てこないときも焦る必要はありません。笑顔やうなずき、相づちをするだけでも立派なコミュニケーションになります。大切なのは、流暢に話すことより「相手に関心を持つこと」だと意識しておきましょう。

まとめ|デイサービスで盛り上がる話は利用者が知っている

デイサービスで会話を盛り上げる秘訣は、「話をすること」ではなく「話を引き出すこと」にあります。高齢者の多くは、語りたい思い出や好きな話題を心に秘めています。

話が盛り上がらずに悩んでいる方は、こちらから一方的に話そうとするのではなく、相手に関心を持ち、耳を傾ける姿勢を持つと良いでしょう。その結果、自然と会話は弾み、利用者との関係性も良くなっていきます。

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